肺高血圧症について
肺高血圧症(Pulmonary Arterial Hypertension)とは
肺高血圧症とは右心室と肺をつなぐ肺動脈圧が上昇する病態の総称になります。肺動脈圧の上昇は、すべての心臓疾患や肺疾患の最終的な病態像としてみられます。
ただすべての心臓疾患や肺疾患で肺動脈圧が上昇するとは限りません。
大きく5つのグループにその原因がわかれます(ニースの分類)。
第一群 | 肺動脈性肺高血圧症(PAH)・・・特発性PAH、遺伝性PAH、各種疾患(結合組織病やHIV、先天性心疾患)に伴うPAH |
第二群 | 左心系疾患に伴う肺高血圧症・・左室収縮不全、左室拡張不全、弁膜症 |
第三群 | 肺疾患や低酸素血症により肺高血圧症・・慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、睡眠呼吸障害など |
第四群 | 慢性血栓塞栓性肺高血圧症 |
第五群 | 詳細不明の多因子の機序による肺高血圧症 |
肺高血圧症の症状
労作時の息切れ、全身倦怠感、胸痛、失神、咳、下腿浮腫などがみられます。
特に労作時の息切れは代表的な症状で初期は階段昇降など運動量が多いときに認められますが、肺高血圧症が進行すると、平地歩行でも他人と同様スピードで歩行ができなくなります。
肺高血圧症の発症年齢
肺高血圧症は若年者に発症する場合も多く、診断が遅れてしまうと右心不全が進行した状態で発見され、予後が悪化します。
このため、早期に診断し、適切な治療を行うことが重要です。
「難治性呼吸器疾患・肺高血圧症に関する調査研究班」による調査では、10年前は若年~中年女性患者さんが男性の2倍以上でした。
ただ近年では70歳以上の男性患者さんが増えてきていて、年齢分布のみでは75歳以上に最も多くみられるようになっています。
肺高血圧症の検査
当院では胸部症状のある患者さんに対して循環器内科専門医の私が心臓超音波検査を施行しています。
肺高血圧症は予後不良な疾患ですが、早期発見・早期介入することで予後改善につながります。
心臓超音波検査では三尖弁の逆流から求めた圧格差から、推定右室収縮期圧(推定肺動脈収縮期圧)を計算し、40mmHg以上で肺高血圧症を疑っていきます。
肺高血圧が疑われる患者さんはカテーテル検査も必要になりますので、速やかに総合病院にご紹介させていただきます。
胸の症状に関しては早期の受診を
肺高血圧症は、まれな病気であるがために見逃されがちな疾患です。重症になるまで診断されない例や、診断されずにそのまま経過されている例も少なくありません。
当院では丁寧な問診と採血検査、心電図検査、心臓超音波検査を組み合わせて、可能な限り肺高血圧症の診断を行っています。
若年者では膠原病の合併例も多く、総合病院での多診療科の連携が非常に重要になってきます。
当院では紹介先まで可能な範囲で患者さんのサポートをおこなっていきます。